境界確認・立会

【境界確認】

隣接所有者らが、実際に現地でお互いの土地との境界を確認し、認識の一致を図る行為。測量の前後は問いません。

「境界確定」と呼ぶこともあります。境界確定測量は土地の面積を確定するために行うものですが、面積を確定するためには境界が明確である必要があります。境界が不明確なままでは正確な面積も測りえないからです。

境界を確定するための測量は、単に依頼された対象地の現況をあるがまま測るだけではありません。
前面道路に加え、隣接地も可能な限り測ります。場合によっては、周囲との均衡を検証するためより広範囲を測量することもあります。

境界に関する資料を収集分析し、測量データの検証をした上で導き出した筆界を、隣接者と立会して相互の境界認識の一致を図り、境界確認図への署名押印をもって境界が確定します。

【境界確定】と【境界確認】

厳密には法的解釈で違いはあるのですが、世間一般的には同一のものと認識されています。

「境界確定」と言えば字のごとく「境界を新たに定める」というような合意形成的・処分的な意味合いがあるのに対して、「境界確認」は「(所有権の)境界を確認」する管理行為と捉えられます。

土地家屋調査士の専門は筆界の調査ですので、本来は「筆界確認」と呼ぶのが相応しいと思われます。
筆界は創設時から不動のものという前提であれば、元々ある筆界の位置を再確認するだけなら保存行為と認めても良いような気がしますが、境界確認行為は「所有権界」と「筆界」が一致しているものとして両方確認するという認識で、ひっくるめて「境界確認」と呼ぶものと考えます。

不動産界隈では、長年「境界確定」と呼ぶのが慣例となっている印象です。

 

 

なぜわざわざ立ち合って境界を確認するのか?

土地の取引の際は、境界を明示して引渡すことが重要事項のひとつとなっています。

実測面積と登記簿面積の差が大きく、法務局に地積更正登記を申請する場合は、隣接所有者と境界確認する必要があります。

○買主と売主、どちらが境界確認するのか?

売主の責任にて境界確認をするのが一般的です。買主は越してきたばかりで境界のことは分かりませんし、境界がはっきりしていない土地に今後何十年も住み続ける不安を解消した状態で引渡したいものです。
境界確認は「安心な未来への架け橋」と言えるでしょう。

一筆の土地の境界を確定するまでには数多くの工程があり、数十万円の費用と一か月以上の時間を要します。

コストと手間が掛かり過ぎると思われるかもしれませんが、考えてみてください。
ほとんどの人にとって、土地や建物を購入するのはおそらく一生に一度、最大の財産となる大切な買物です。

買主の立場になったとします。

通勤や買物のしやすさ、学校や医療機関を含めた周囲の施設と生活環境から予算に見合った物件をいくつも検討を重ねて、ようやく決めた土地に家を新築する予定です。
この先何十年(ひょっとしたら数世代)も住むにあたり、境界が確定していてお隣さんとの境界争いの種がない安定した土地と、お隣さんとの境界があいまいで不安定な土地、どちらに住みたいでしょうか?

売主にとっては住み慣れた土地でも、買主からすれば新たな住環境と知らないご近所さんです。期待と緊張に満ちた新生活の始まりなのです。

売主と買主は、土地という最大の財産を継承する関係であることを思えば貴重なご縁になります。
あらためて、末永く平穏に暮らしていただくくために、安心な状態で引き渡すことが「売主の義務」と考えましょう。

 

○境界確認をしないと起こりえること


相場より格安だった土地を購入して家を建てたが、何年か経ってお隣さんが土地を売却しようといざ境界確認をしてみると、自分が考えていたところと実際の筆界が異なっていたために、境界の越境が明らかになったという不運なケースがあります。

どうやら前所有者が売却前に境界確認をしておらず、仲介業者も既存のブロック塀を境界と勘違いしていたようです。

境界 越境

境界の越境物は樹木など植生、物置やブロック塀などの工作物、細かいところでは屋根の庇(ひさし)や雨樋、エアコンの室外機などまで様々です。

仲介業者ももちろん契約前に現地は確認しますが、目で見て越境が明らかである場合は別として、境界が微妙で明らかでない、または認識に勘違いがあった場合は、そもそも越境の有無もはっきりしない状態となります。

枝や屋根の雨樋がはみ出ているくらいであれば解決はさほど難しくはないのですが、ブロック塀や土留を移築または撤去するとなると大ごとです。

以上のようなトラブルは必ず起こるわけではありませんが、多少割高でも境界確認済の土地を選ぶに越したことはありません。

○土地の境界は目に見えているものが正しいとは限りません


土地の境界を物理的に明示するものとして杭などの境界標識がありますが、誰が見ても敷地の境界が分かるように可視化したものの代表例としてブロック塀などの工作物があります。

一般的に、ブロック塀を設置するときは境界線ギリギリのところに設置しますよね。
境界線を越えていなければ問題はありませんが、自分の土地を目一杯広く使いたい思いが強すぎた結果、うっかり本来の筆界を越境した位置にブロックを設置してしまうことがあるかも知れません。
また、工事業者による施工ミスも絶対に起こらないとは言い切れませんし、そもそも本来の筆界とは違う場所に杭があったために境界を勘違いしていたというケースもありえます。
間違いは誰でも犯しますし、人的要因以外でも地震など災害によってブロック塀が傾いたり土留が移動することもあります。

目に見えている境界が正しい筆界であるのかは①歴史的資料②現地の状況③関係者の証言から総合的に判断する必要があります。

①資料…筆界が形成された時期から現在に至るまでの資料を収集する。
明治時代の地租改正による原始筆界なのか、土地改良や区画整理事業等による後発的筆界なのかを役所など公的機関で調査し、境界確定協議書や承諾書の有無、私人が保管する資料など

②現地の状況…境界杭はあるか、ブロック塀や擁壁、土留など境界工作物はあるか

③関係者の証言…所有者や近所の古老・精通者など長年の土地事情を知る者に聞き取りして、杭や境界工作物が設置された経緯や、過去に遡って境界に関する協議や承諾の有無を確認する。

「筆界の専門家」として、上記の①書証、②物証、③人証を調査し、筆界創設時から時を経てバラバラになってしまった情報のピース(断片)を、パズルのように組み合わせて正しい筆界を導き出す、それが土地家屋調査士です。

お隣さんが境界立会いをしてくれない時はどうするの?

「地積更正」や「分筆」を登記申請する場合、筆界確認証明情報(境界確認図)を添付するのが実務上の慣例です。
しかし、筆界が明らかであると認められる場合は筆界確認情報の添付を必ずしも必要としないとの通達が令和4年に法務省より出ておりますので、個別の状況によっては申請は可能です。

立会してくれないし筆界もわからん!というときは、半年程度の時間はかかるものの、法務局の「筆界特定制度」を利用できます。隣接者が不明の場合でも申請できます。

裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution 通称ADR)」という民間の和解・調停制度もありますが、相手側が話し合いに応じてくれない場合は利用できません。

ADR 筆界特定 筆界確定訴訟

最後の手段である「筆界確定訴訟」や「所有権界の確認訴訟」など、裁判までいくと判決の確定まで数年かかることもあり、費用も馬鹿になりません。何よりも、争った隣接者と遺恨を残すことになるので、極力避けたいところです。